【積算担当に聞くvol.2】リノベーションの見積もりはどうつくる? 既存住宅と向き合う積算の専門性
積算・商品企画・購買を担当し、スタイル工房の住まいづくりを支えている竹原さん。前回は、それぞれの仕事内容と、三つの仕事がどのようにつながっているのかを伺いました。今回は、リノベーションにおける「積算」の仕事をさらに掘り下げます。既存住宅の見えない部分をどう読み取るのか。お客様の希望、プラン、施工性、予算をどのように調整し、見積もりへ落とし込むのか。印象に残っている施工事例も交えながら、数字を積み上げるだけではない、リノベーション積算の仕事について語っていただきました。
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積算課リーダー 兼 商品企画・購買・推進役 竹原
大学で建築とデザインを学んだ後、店舗内装会社に新卒入社。2011年にスタイル工房へ転職し、現在は積算課リーダーとして、積算をはじめ商品企画・購買など幅広い業務を担当している。プライベートでは住みながら緩やかに自宅リノベーションを進行中。自身で施工も手がけながら、家族と愛猫が心地よく暮らせる住まいづくりを目指しています。
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目次
- 見えない部分を知識で読み取る|リノベーション特有の現地調査スキル
- デザインと予算を両立する|施工方法・商品選定に活きる積算スキル
- 費用をかける場所を見極める|事例に見るリノベーション積算の判断
- 一つの正解を出すのではなく、調整しながら形にする|プランナーや工事部との連携
- 個別の見積もりを仕組みに変える|積算の仕事に求められるスキルとやりがい
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見えない部分を知識で読み取る|リノベーション特有の現地調査スキル
現地調査では、建物がどの程度劣化しているのか、どこをどのように直す必要があるのかを確認します。ただ、目で見えるところだけを確認しているわけではありません。目視できない部分については、これまでの知識や経験をもとに状態を推定します。もちろん、現地調査の段階ですべてを確定できるわけではありません。確認できない部分については、一定の予算を見込んでおき、工事が始まってから改めて確認することもあります。
そのため、見積書では、現時点で確定している工事項目と、今後確認が必要な項目を分けて整理しています。分からないことを一つの金額にまとめてしまうのではなく、今の段階で判断できることと、これから確認することを整理しておく。そこも、リノベーションの積算では大切な仕事です。
デザインと予算を両立する|施工方法・商品選定に活きる積算スキル
積算は、プランナーが考えたプランをそのまま金額に置き換えるだけの仕事ではありません。お客様の予算に合わない場合には、施工方法や商品を工夫することで、デザインの印象をできるだけ保ちながら費用を調整します。例えば、壁掛けテレビ周りでは、造作の壁面収納を大きくつくるのではなく、間仕切り壁を一枚設けて配線やレコーダーを裏側に納める方法を提案し、デザインの印象を保ちながら費用を抑えることがあります。
その現場の施工管理を担当するつもりで工程を考え、「この条件なら、どのようにつくるのがよいか」を考えることも積算の仕事です。同じように見える工事でも、建物の状態や現場条件が違えば、必要な工事や手間も変わります。
ここでは、商品企画・購買の仕事で得た商品知識も生きてきます。使える商品の選択肢を多く持っていれば、単純に何かを削るのではなく、別の方法でプランを実現できる可能性が広がります。お客様が大切にしたい部分を見極めながら、施工方法や商品を工夫し、限られた予算の中でどう実現するかを考える。それも積算の仕事です。
費用をかける場所を見極める|事例に見るリノベーション積算の判断
印象に残っているのは、施工事例No.707 ―U Style―です。

この事例では、ケイミューの「SOLIDO」を採用しました。SOLIDOは空間に重厚感を出せる一方、当時は比較的コストを抑えられる商品でした。ちょうど社内でも提案を広げていた時期で、デザインとコストの両面から、この空間に合う商品として採用されています。
先ほどの壁掛けテレビ周りの工夫で抑えた予算は、空間の印象をつくる棚板やカウンターに配分しました。リノベーションでは、すべての場所に同じように費用をかける必要はありません。見せ場となる場所には必要なコストをかけ、見えにくい部分では施工方法を工夫する。全体のバランスを見ながら、どこに費用をかけるのかを考えることも積算の役割です。お客様が実現したいことを、単純に「予算が足りないからできない」と終わらせるのではなく、別のつくり方や商品を考える。この事例は、商品や施工についての知識を生かしながら、デザインとコストのバランスを考えた一例だと思います。


一つの正解を出すのではなく、調整しながら形にする|プランナーや工事部との連携
正確な見積もりといっても、必ず一つの正解があるわけではありません。同じ工事でも、職人さんや協力業者によって原価が異なることがありますし、実際の現場では、図面だけでは分からなかった条件が出てくることもあります。だからこそ、積算では数字だけを見るのではなく、プランナーや工事部、それぞれの立場や考え方を理解することが大切です。プランナーがお客様の希望や予算を踏まえてプランを考える一方、工事部は実際に必要となる工事や施工方法を考えます。積算はその両方を理解した上で、工事として無理のない内容や金額になるよう調整していきます。
また、適切な見積もりをつくるためには、日々の情報収集が欠かせません。ホームセンターやECショップで市場価格を調べたり、協力業者から届く請求書を確認したりしながら、実際にどのくらいの費用がかかっているのかを確認しています。近年は資材価格の値上がりに加え、配送費や各業者の諸経費なども変化しています。そうした変化を見積もりに反映するため、積算システムの価格データも定期的に更新しています。実際の原価と照らし合わせながら価格を見直していくことも、積算の大切な仕事です。

個別の見積もりを仕組みに変える|積算の仕事に求められるスキルとやりがい
積算は、お客様と直接お話しする機会が多い仕事ではありません。それでも、見積もりを通して、プランナーや工事部と一緒に一つの住まいを形にしていく仕事です。一件の見積もりを完成させるだけでなく、仕事の中にある問題を見つけ、「どうすれば解決できるのか」「そのためにどのような流れをつくればよいのか」を考えることも大切です。例えば、これまで個人の経験や判断に頼っていた部分を整理し、誰が担当しても一定の品質で仕事を進められるよう、フローやシステムに落とし込んでいく。個人の中にある知識や経験を、チーム全体で使える形に変えていくことも、積算の仕事の面白さの一つだと思います。
既存の建物を読み取り、プランや予算、施工条件を整理し、関係する人たちと相談しながら、実現できる形を探していく。そして、そこで得た経験を次の仕事やチームの仕組みにもつなげていく。数字を出すことは、積算の仕事の一部です。その数字の根拠を考え、プロジェクト全体がうまく進むように調整する。さらに、個々の経験をチームで共有し、よりよい仕事の仕組みへとつなげていく。そこに、リノベーションにおける積算の役割と面白さがあると思っています。

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