【プランナー監修】マンションから戸建てに住み替えるときのリノベーションのポイントは?
都市圏ではマンションが主流とはいえ、戸建て人気も根強いもの。スタイル工房にも、持ち家のマンションから、中古戸建てをリノベーションして住み替える人が一定数いらっしゃいます。戸建てはやっぱりココがいい!というメリットや、マンションから戸建てへの住み替えリノベーションのポイントをプランナーに聞いてきました。
お話を伺ったのは・・・
チーフプランナー 渡辺
二級建築士、スタイル工房チーフプランナー。
マンション、ツーバイや築古の戸建てなど、難易度の高いリフォームにも数多く携わる。
お客様やメンバーと共に心地の良い暮らしを導き出す。
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目次
- マンションから戸建てに住み替えるメリットは?
- 戸建てへの住み替えリノベーションの注意点は?
- 住み替え事例①|戸建てならではの吹抜けリビングが心地いい
- 住み替え事例②|LDKを明るい2階に移動して耐震性も向上
- 住み替え事例③|間取りは変えずにヌックで遊び心をプラス
- まとめ
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マンションから戸建てに住み替えるメリットは?
「管理規約がないため、比較的自由なリノベーションが可能」
まず、マンションにない戸建ての魅力や、住み替えてよかったと実感するポイントにはどのようなものがあるでしょうか?
「住み替えた後に、お客様からよくお聞きするのが音の問題ですね。特に小さいお子さまがいるご家族では、階下への振動や騒音を気にせず、のびのび子育てできて嬉しいとおっしゃる方が多いです。
また、マンションではペット可であっても、大型犬はNGであったり、頭数に制限が設けられていることがほとんど。その点、戸建ては自由にペットとの暮らしが楽しめますし、お庭があればガーデニングなどもできます」(渡辺プランナー 以下同)。
リノベーションに関して、戸建てのメリットはありますか?
「マンションの管理規約では、リノベーションの工事内容まで制限されていることも多いんです。例えば、防音性を確保するために床はカーペットのみと決められていたり、天井を現しにできなかったり。配管の都合で、水まわりが動かせない建物もあります。
その点、戸建ては好きな素材が使えます。もちろん法令に則って強度が確保できていることは大前提ですが、プランの自由度はマンションより高いといえます」
無垢の床にしたかったけど、マンションの管理規約で使えなかった!というのはよく聞く話です。使いたい素材が決まっている人や、自由に間取りを考えたい人は戸建て向きといえるでしょう。
戸建てへの住み替えリノベーションの注意点は?
「寒いと感じる人が多いかも。おうちの断熱性アップを」
戸建てには様々なメリットがあるなかで、『ここはマンションの方がよかったな……』というケースもあるのでしょうか。
「もともと戸建てに住んでいると気にならないことが多いようですが、マンションから戸建てに住み替えて『寒い』とおっしゃる方は多いです。角部屋や最上階でない限り、マンションの方がもともとの断熱性が高いので。
そこで、マンションから戸建てへの住み替えリノベーションでは特に、断熱工事を手厚くしたり、各部屋・各階の気温差が出ないよう配慮しています」
昔は『とにかく換気』という家づくりが主流でした。そのため、築年数が古い一戸建てでは、トイレやお風呂、洗面など各所に窓が設けられているおうちが多くあります。
しかし、窓から熱が逃げやすいことや防犯面も考えて、戸建てリノベーションでは、窓を壁にしたいという希望が増えているそうです。
「特に、40代以下の方やマンション暮らしが長い方からは、窓をなくしたいというご要望が多いですね」
最後に、住み始めてから気をつけておいた方がよいことや、注意点などを教えていただきました。
「修繕積立金を毎月払い、管理組合や理事会で修繕を決定するマンションと違い、戸建てはすべて自分で計画する必要があります。修繕のタイミングや依頼する業者の選定や手配も自分でしなくてはなりません。その判断材料として、定期的に信頼できる業者にみてもらうなどできるとよいですね。
また、2階建てのおうちでは、高齢になったときに階段の昇り降りが大変になるかもしれません。将来は家を売却してまたマンションに住み替えるのか、子どもや孫に住み継ぎたい意向はあるのかなど、最初の打合せのときにお聞きしています」
将来にわたり、その家をどう維持していくのかも考えておく必要があるということですね。それでは、ここからは実際の住み替え事例を見てみましょう。
住み替え事例①|戸建てならではの吹抜けリビングが心地いい
【木造在来工法|築30年|リノベーション面積 約135㎡】
ご実家を引き継いで、自分たちの暮らしに合うようにリノベーションした例です。
もともと2階にあったリビングは、戸建てならではの勾配天井や化粧梁が気持ちいい空間。
隣接する和室を取り込んで、吹抜けを生かしたひと続きの開放的な空間をつくりました。
独立していたキッチンは壁を取り払い、リビングの吹抜けまで望めるように。
キッチンカウンターのモールテックスや壁のタイルなど、素材感を大切にしたインテリアが素敵ですね。
1階は水まわりスペースをひろげて洗面室・脱衣室をセパレートに。
新設したウォークインクローゼットとつながる動線で、身支度や帰宅後の動きがスムーズに。
玄関から続く長い廊下は、自転車などが置けるホビースペースにしました。
外もお庭を一部整理して駐車スペースを確保し、外壁も塗り直して見た目を一新。
駐車スペースをつくったり外観を好きなデザインにできるのも、マンションにはないメリットですね。
荷重のバランスを整えて耐震性を確保し、床・壁・天井の断熱材充填、サッシの交換などで断熱性能もアップしました。
https://www.stylekoubou.com/sekou/works/sekou_w22.html
住み替え事例②|LDKを明るい2階に移動して耐震性も向上
【木質パネル工法|築34年|リノベーション面積 約136㎡】
お祖父様が建てた家をリノベーションして住むことにしたご家族。
1階にあったLDKを2階に移し、ロフトを吹き抜けにして開放感を高めました。
1階に個室を設けて壁を増やし、2階に大空間という間取りは耐震面でも理にかなっています。
LDKはアイランドキッチンに、造作カウンターを組み合わせてゆったり。
キッチンとリビングの間の抜けない柱には棚板を渡して、写真や雑貨を飾るためのスペースに。
1階の玄関に壁を立てて内部に大容量のSICをつくったことで、メイン玄関はいつもスッキリ。
洗面室+ランドリールームとファミリークローゼットが対面の、効率的な洗濯動線も確保しています。
https://www.stylekoubou.com/sekou/works/sekou_m102.html
住み替え事例③|間取りは変えずにヌックで遊び心をプラス
【2×4工法|築14年|リノベーション面積 約130㎡】
こちらは、柱ではなく壁で家を支える2×4工法の中古住宅を購入してリノベーションした例。
比較的新しいこともあり、気密・断熱性や耐震性に優れた建物でした。
その反面、大幅な間取り変更は難しかったのですが、その分使い勝手とデザインにこだわっています。
例えばリビングの一角、WICだったスペースを使ってつくったのは、羽目板張りのヌック!
内部にはオープン棚や、マットレスの下には収納スペースも設けて機能面も充実させました。
キッチンはモダンな佇まいが美しいグラフテクトを採用。
背面収納もセットで揃えて、冷蔵庫はダイニングから見えづらい奥へ。
オープンキッチンでも、スッキリと生活感を出さずに暮らすことができます。
水まわりや収納も、取り出しやすさ重視のオープン棚と扉で隠す場所をそれぞれ考慮して造作。
素材感やデザインを統一することで、住まい全体で好みの世界観をかたちにしました。
https://www.stylekoubou.com/sekou/works/sekou_y80.html
まとめ
マンションと戸建てでは、住み始めてからのランニングコストも異なります。維持費に関しては、自分で修繕のタイミングを決められる(=お金がなければ先延ばしにもできる)戸建てと違い、マンションでは毎月の修繕積立金を負担に感じるかもしれません。
固定資産税は土地のある戸建ての方が高い傾向で、光熱費も断熱性や広さなどの要因から、マンションよりも戸建ての方が高くなることが多いようです。
その一方で、別途駐車場の契約が必要なマンションと違い、駐車スペースのある戸建てでは駐車場代はかかりません。ご自身のライフスタイルに合わせて、10年、20年単位でどれくらいかかるかをシミュレーションしてみましょう。